The Beatles 讃

 恥ずかしながら不惑の年を目前にして、突然ビートルズ の魅力に目覚めた。といっても、まだRubber Soul 以降 Abbey Roadまでの主要アルバム(従ってLet it be は除かれ る)と Magical Mystery Tour、そして "1" を聴いただけだ が、私なりに彼らの魅力をかなり感じ取れたと思っている。 いくつかのファンのウェブページや中山康樹氏の講談社現 代新書「これがビートルズだ」などをのぞき見て、それな りに知識も得た。私にとってはどのアルバムも魅力的だっ たが、現在の私には何と言っても Abbey Road が最高で、 聴くたびに文字通り涙がにじむような感動を覚える。以下 は、ほとんど世間で言われていることの蒸し返しに過ぎな いかもしれないが、私が感じたビートルズの魅力をここで 列挙してみる。

  1. まず、彼らの表現している世界が恐ろしく多様なことを 挙げたい。今まで彼らの有名曲を通して何となく持ってい たイメージが一新された。甘い曲、悲しい曲、かっこいい 曲、実験的で何が何だかわからない曲まであって、しかも 常に現状に安住しないで先に進もうとしている姿勢が感じ られる。特にJohnの曲には意地でも「普通の名曲」なんか 書くもんかという気概があるように思える。Paul の曲も美 しいのはバラードだけでなくて、ロックみたいな曲でも何 でもござれのところがすごい。

  2. 上と同じことかもしれないが、アレンジや演奏形態など の多様性も驚くべきもので、通常の音楽のジャンルを超え ているように思える。それでいて、全体としてのビートル ズのイメージは鮮烈であり、それぞれの曲の持ち味を生か すようにうまい味付けがほどこされているのが素人にもわ かる。

  3. 彼らが声をあわせると抜群に美しく響く。

  4. それぞれの曲が主に誰によって書かれたのかを知ると、 各メンバーの個性や天才ぶりがよくわかる。当然、John と Paul の関係に思いをめぐらすのは楽しい。

  5. これは後期のアルバム中心に聴いたからかもしれない が、どんなにやかましい曲でも、一種の静けさというか落 ち着きのようなものが感じられるような気がする。一種の 叙情性か?これが極まるのがもちろんAbbey Road なので、 このアルバムがマイベストなのだが、たとえばSgt. Peppers などの全然違うイメージのアルバムでも、叙情性といって 悪ければ、風格というか知的なたたずまいが感じられる。

 自分にとってベストの曲はまだよくわからない。もう少 し聴き込んでから、あれこれ楽しみながら選ぼうと思う。 John と Paul のどっちが好きかもよくわからない。たぶん Johnの方が玄人向きなのだと思うので、ここでは一応素人 として、Paul を推しておこう。White album や Abbey Road ではGeorgeも感動的な曲を書いている。これだけの天才達 が解散後、どういう曲を書いたのかなど、その後の軌跡に ついては少しは知っているのだが、やはりミューズの神様 は彼らから離れてしまったのだろうか?あるいは、やっぱ りJohn と Paul が共作しないと、なかなか傑作にはならな いのだろうか?ビートルズについてはこのあたりまで聴け ば十分かとも思っていたが、彼らの初期の曲や解散後の曲 も今後少しずつ聴いて、今後それらの疑問も追及していき たくなった。

(Jul.4, 2003)


(C) Kenta Nakai