シャルル・デュトワが 2003 年 9 月で N 響の音楽監督を アシュケナージに譲るというニュースをきいて、せっかく 東京にいる間に一度彼とN響のコンビの演奏を聴いておきたい ものだと思っていたところ、定期公演で彼が得意と思われる フランス系の曲目で、かつ生演奏で聴く値打ちのありそうな 演目(ベルリオーズのレクイエム)があったので、学会中では あったが思わず切符を予約した。奇しくも 13 日の金曜日で あったが、レクイエムという曲目にはむしろふさわしかったの かもしれない。
さて、NHK ホールも N 響、それから曲目も今回が初めてで あったので、あまり的確な感想は書けそうにない。ただ、天の 四方から響いてくるようにと指示された金管隊は、ステージの
両わきと二階の舞台袖のあたりにいて、それなりの迫力を うみだしていた。演奏は曲目のせいもあると思うが、少し流れ がよくないような印象を受けた。ただ、終曲はとても美しかっ
たし、比較的穏やかな奉献唱も印象に残った。独唱は出番が 一瞬しかなくてかわいそうだが、美しい歌唱だった。結論と しては、これぞ世界のデュトワという印象ではなかった(指揮
ぶりは格好良かったけど)。やっぱりN響との関係は大成功とは いかなかったのかもしれないと言ったら言い過ぎだろうか。
明治学院大学のチャペルで開かれるバッハ・アカデミーの演奏 会も今回が 18 回目という。この日の曲目はブランデンブルク 協奏曲の第2番、第4番と、クリスマル・オラトリオの第1部で
あった。どれもよかったが、特にブランデンブルクの4番が出色 の出来と思われた。最初の2番は、結構好きな曲であるが、島田 俊雄氏のトランペットが苦戦しているなと思ってしまった。しか
し、後できくところによると、自作のトランペットで、バルブの ない昔のタイプのため、超絶技巧だったのだそうだ。第4番は、 ヴァイオリン独奏が桐山健志氏で、リコーダーが山岡重治・太田
光子氏だったが、すばらしかった。第一楽章を聴いているうちは 素朴な古楽器の音がチャペルの雰囲気とマッチしているなと感じ ていたが、第二楽章では独奏者達が後方の説教壇?に移動して
演奏したが、なきたくなるような美しさだった。そして第三楽章 では、また全面に移動して、今度はヴァイオリンが多いに盛り 上がり、思わず興奮してしまった。クリスマス・オラトリオは
本来、一日に一部ずつ演奏して6回で全部を終わるようになって いるとのことだったが、やはりもっと聴きたいという気持ちに なってしまった。